世の中に出回っているギターのほとんどは、写真のように左手でネック(細い部分)を持って弦を押さえ、右手はボディの穴付近で弦をはじく、というような形にできています。
世の中には右利きの人が圧倒的に多いわけで、このギターの形は基本的に「右利き用」と考えられるわけですが、では、左利きの人はどうしたらいいのでしょうか?
時々尋ねられることなので、この場でお答えしておきたいと思います。
右利き、左利きの比率
ちなみに、右利きの人と左利きの人はおおよそ9:1なんだそうです。
ただ、国や地域によって違うとか、時代によって違うとか、いろいろな説はあるそうなんですが、まぁだいたい左利きの人は1割程度、ということなんでしょう。
ともかく、圧倒的に右利きのほうが多いことにはかわりないわけで、そうなると、一般的に出回っているギターのほとんどが右利き用というふうに考えられるわけですね。
左利き用のギター
では左利きの人ように作られたギターは存在しないのか、というと、そんなことはありません。
ちゃんと逆向きになっているギターが、各メーカーから市販されています。
このように、ピックガード(ボディの穴の横についている茶色い部分)の位置が通常の右用とは反対側についていますね。
画像ではわかりづらいと思いますが、弦の順番も逆に張られています。
ただ、問題は・・・
圧倒的に数が少ないことです。
製造されている種類、本数も少ないですし、楽器屋さんに置いてある本数/種類も極端に少ないです。
一口にギターといってもいろんな種類がありますし、音色や見た目、弾きやすさ・・・等の個性があります。
自分にあったもの、自分の好きなものを選びたいところですが、そもそも左用は種類が少ないので、選択肢が極端に少なくなってしまいます。
しかも、ちょっとだけ割高だったりもします。
このように、どうしても左利き用ギターを買うにあたっては、デメリットがあるんですね。
また、買う時だけではなく、後々いろいろとデメリットが・・・
左用ギターを使うことのデメリット
デメリットの話ばかりで申し訳ないんですが・・・
左利き用のギターを使うということは、つまりほかの人(右利きの人)のギターを借りるとか、試奏する、ということができなくなるわけです。
将来、ギターを買い換えたり買い足したりする時にも、やはり多くのギターを試してからにしたいものですよね。
音楽仲間に「よさそうなギターだね、ちょっと弾かせてくれる?」なんていうことができないのはとても残念なこと。
楽器屋さんに行っても、ごくわずかな左用の在庫品しか試せない、というのは大きなデメリットですね。
また初心者の人にとっても、ほとんどの教則本や動画などは右利き用のものになっているので、とても見にくくて苦労するかと思います。
正直なところ、教える側としても、頭の中で指の向きを逆に変換しないといけないので、ちょっと難しくなります。
左利きの人が右利き用のギターで始めることは不可能か?
こんなふうにデメリットの多い左利き用ギター。
見た目的に左利きのギターっていうのはかっこいいんですけどね、インパクトもあるし。
ただ、実用面では、なかなか不利なことばかり。
そこで、そんなにデメリットが多いのなら、いっそ右利き用のギターで始めてしまうことは無理なんでしょうか??
最初から右利き用で始めてしまえば、なんとかなりそうな気がしませんか??
実際のところはどうなんでしょうか。
どっちが弾きやすいのか
ギターは両手をそれぞれ別々に使う楽器です。
左手で弦を押さえ、右手ではじく。
でも、全く初めての方にとっては、どちらの手も思うように動かせません。
なので、最初の最初は、どっちが右手でどっちが左手でも、関係ないのかもしれないんです。
ただ、やはり自然にほとんどの方(右利きの人)が左手をネックに、右手をボディのほうに持っていきます。
やはりそのほうが自然なんでしょう。
私は左利きになった経験がないので比較のしようがありませんが、やはり左利きの人は逆に構えたほうが本当は楽なのかもしれません。
ただ、たとえば昔なら、左利きの人でも右で字を書くように矯正させられたり、ということがよくありました。
そしてそうやって育った人は、いつの間にか右でしかうまく字が書けないようになっていたりもします。
野球選手なんかでも、左投げや左打ちの方が有利だからと、右利きなのに左で訓練した人がいたりしますよね。
そう考えると、全く弾けない段階からだったら、左利きの人でも右利き用のギターを使っても弾けるようになるのではないでしょうか。
というか、実際、左利きの人でも右用ギターを使っている人はかなり多くいます。
もちろん、多少のハンディはあるかもしれませんが・・・
でも、上記のような、左用ギターを使うデメリットと比較すると、右用に慣れてしまったほうがいいんじゃないか、という気もするんですね。
結局、おすすめはどっち?
考えてみると、ピアノには左利き用というものがありません。
探せばあるのかもしれませんが、ほぼ市販されてはいないでしょう。
しかもピアノは持ち運びできませんから、ピアニストはコンサート会場や練習室にあるピアノを使わなければいけません。
当然、低音が左、高音が左というふうに並んでいるピアノを使わなければなりません。
でも実際に、左利きのピアニスト、キーボーディストは多数存在します。
気になったので、バイオリンについても調べてみました。
左利き用が全くないわけではないのですが、ほとんどの左利きの人が、右利き用の楽器を普通に使っているそうです。
ギターを弾く手の動きというのは、日常生活の中の動きとは全く違います。
右利き左利き関係なく、最初は全く思い通りに手を動かすことができない、そんなゼロの段階から始まります。
後々細かい点で、左利きであることのリスクというのは出てくるのでしょうけど、それでも実際に右用を使っているギタリスト、左利きのピアニストやバイオリニストがいることを考えると、右用のギターで始めることも問題ないのかなと考えています。
実際、やましんギターレッスンでは、左利きの人には、まず、右、左両方でギターを持ってみてもらいます。
そして形だけでも、コードを押さえてみてもらいます。
※実際左用ギターは常備していないので、形だけです。右用ギターを反対に持ってもらい、左用ギターで押さえる場合の形でコードを押さえてみてもらいます。
その両方を比較してどちらがしっくりくるか、難しさに大きな差はあるかを確認してもらっています。
そして本格的に始める前に、できるだけ楽器屋さん等へ行ってもらい、左用ギターを実際に試してもらうようにお話して、どちらを使うかを決めてもらうようにしています。
特に差がない、よくわからないのなら、様々なデメリットのことを考えて、右用ギターで始めてもらう、というようにしています。
もちろん、左利き用ギターを選択した人にも、レッスンは可能ですのでご安心ください!
※すでに左用ギターで始めていて、ある程度進んでいる人の場合はそのまま左用で続けることをおすすめしています。
番外編 右利き用ギターを逆さまにして使う・・・
ここからは番外編。はっきりいって、おすすめはしませんが(笑)
右利き用のギターを逆さまに持って、そのまま弾いている人も、わずかながらいます。
左利き用ギターの場合だと、一番上に太い低音弦がくるように、ちゃんと張り替えられています。
でもこの、逆さまに持つ人の場合、そのまま右用ギターを逆に持っているだけなので、一番上に細い高音弦がくるようになってしまいます。
だから当然、コードの押さえ方も逆になってくるんですね。ややこしいです。
試しにやってみました(笑)
まずこれが、普通に構えて「C」のコードを押さえた場合。
涼しい顔して、やってますね。
そして、そのまま同じギターを逆さまに持って、「C」になるように押さえてみました。
いかにも必死そうです。手首の角度がおかしい・・・
弦をはじく左手のほうも無駄な力が入っていて、変な形です。
一応、何十年かギターを弾いてきていますが、どう見ても初心者っぽい(笑)
実際、鳴らしてみましたが、ちゃんと音が出ていません。
弦の位置が逆ですから、当然アルペジオで弾く場合の指の使い方が変わってきます。っていうか、できるのかな?
ストロークをする場合も、音の感じがちょっと違ってきますね。
実際にこの弾き方をしている人は・・・あまり「有名ギタリスト」と呼べる人はいないですが、歌手の松崎しげるさん、甲斐よしひろさんなどが有名。
どちらも「ギタリスト」というよりは、歌のバックでギターを弾く人、という感じですが、でも両者とも、なかなか上手でいい感じのバッキングギターを弾く人です。
さらに古い外国の人ですが、アルバート・キングというブルースマンは、このスタイルでリードギターもグイグイやってました。
このスタイルだと、右利きの人のギターでも借りることができるし、試奏も問題なくできますね。
でも、あまりおすすめはしないですね。これは弾き方を覚えるのがなかなか大変だし、教えてくれる人も周りにいないでしょうから。
※右用のギターに、逆の順番で弦を張れば左用と同じになるのでは??と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
できなくはないですが、パーツをいくつか改造しなければならなくなりますから、どうしてもそうしたい場合は必ず楽器の専門家に相談しましょう。